製作手順公開

1インチドライバ用カットオフ750Hzのデフラクション・ウッドホーン製作の様子です。

フィンランドバーチ製の750Hzカットオフのデフラクションホーンの製作開始です。 先ずは,扇形部分とフィン部分を切り出し,重ねた所です。 扇形部分は1〜2回の切り出しで済むため,24mmや30mm厚の材料を使用する作者もいますが,ここでは「薄い材料」を何層にも重ねることにより,曲面の精度を上げるよう考慮しております。

フィンランドバーチとは,フィンランド製の合板でありその材料はホワイトバーチ(白樺)です。 ただ,同じ白樺でも日本のものよりは硬質のようであります。 フィンランドバーチは,ウッドホーンやスピーカーボックスに珍重されているものですが,固く重いため加工はやや難しい部類に入るでしょう。
扇形部分の合わせが完了したところです。 丸棒は扇形部分間の位置合わせのためのものです。 これが無いと接着時にズレが生じてしまいます。 丸棒と扇形部分とは,打ち込まないと組み立たないくらいにギチギチに作ってあります。
ウェイトは,一番振動しやすい「ひさし」部分内部に組み込みます。 これによって,材質の密度が部分的に変わるため,制振効果が現れます。 ウェイトは「密度を変える」ためのものであり,メチャメチャ重い必要はありません。 重すぎると,今度はその部分を節にした振動が始まってしまいます。 本当は,振動を解析して共振点を求め,振動の節と節の間の割り切れない点(例えば1/1.73205・・・の点)にウェイトを置くのが正式なのですが,そこまではとても出来ませんし効果もそう違いはないと思っています。 写真は,扇部分に制振用ウェイトを投入した様子です。 ウェイトには粒状鉛を使用しております。 この後,これを固めるのですが,よく使用されるエポキシ樹脂は流動性に難があり,充分に樹脂がまわり切らない恐れがありますので,ここでは「ポリウレタン樹脂」で固めることになります。 なお,板状のウェイトを接着する場合にはエポキシを使用します。
扇部分の貼り合わせを終わり,左右の板を仮組みした状態です。 この後は扇部分の成形に入ります。
扇形部分を成形し,仮組みしたところです。
フィンを成形したところです。 この後,内部の塗装と扇形部分の組立てに入ります。
フィンの取付けは,フィンの形に穴をあけた冶具で位置決めします。
フィンの部分は上下の間隔が一定ですから,双曲線関数に従って開口面積を大きくするとなると,左右方向で空間を調整するより他に方法はありません。 フィンは,音道を分割するためのものと言うよりむしろ,音道の面積の変化をコントロールするためのものと言えます。
側板を組み立てたところです。 側板は扇形部分に接着するのですが,そのままでは圧着力が足りませんので「木ネジ」を併用します。 木ネジの頭は枕頭させ,穴は木片で塞いであります。
スロートアダプタを取付けるための受けの部分を組み立てたところです。
スロートアダプタ用薄板を角型に切り出したところです。 全部厚さが同じわけではありませんが, 重ねると必要な厚さになるようにしております。 一般のホーンでは,このアダプタを軽視しているところも見られます。

アダプタはホーンの一部であり,スロート部から本体に至る空間は,本体と同じように「双曲線関数」に従って開口面積が増加していく必要があります。 ただ単に寸法合わせを目的としたとしか思えないアダプタが,結構幅をきかせている現状はいかなる理由であるのかわかりません。 アダプタの寸法はカットオフに直接関係しますので,本来はカットオフの表示の無いアダプタは存在しないはずです。(どう見ても長すぎるものが散見されます)
各薄板をその位置の開口面積に従った寸法に穴をあけ,それを重ねて段差を削る事により,必要な曲線を求めています。 適当な(必要なスロート厚さに近い)1枚板に丸穴をあけ,ヤスリで角に削ったのでは正確な曲線は得られません。 このあたりはかなり音質や特性に効いてきます。
貼り合せて角を落としたところです。
出来上がったスロートアダプタを取付けたところです。 この後ドライバ取付け穴をあけ,塗装して完成となります。
スロートアダプタを外したところです。 ドライバ取付用の穴のほかに,位置合わせのためのダボもあり,ボルトの締め方によって位置ズレを起こす事を防いでいます。 ネジ穴はネジより少し大きめにしなければなりませんので,正しい位置に固定するためにはダボが極めて有効になります。
これが完成形の一つの形態です。 いつもこのような作りになるわけではありませんが,大筋は同じです。 これまでのものはこの通りに製作していた訳ではありませんが,今後はこの作りを基本として考えたいと思っています。
後を見ると,ドライバの取付け方がわかると思います。 中央左右のバカ穴は,アルティックタイプの2穴用です。 後からでは正確な位置出しが出来ませんので,製作段階で作り込んでおきます。